
画像生成AIの世界に身を置く皆さんなら、誰もが一度はこんな不満に直面したことがあるはずです。
「やっと理想のキャラクターができたと思ったら、次の画像では顔が変わってしまった」
「複雑な構図を指定しても、AIがうまく理解してくれない」
「複数の画像を一枚に合成するのに、結局Photoshopが必要だった」
これらは、どれだけ高性能なAIを使っても避けられない、業界の”常識”でした。しかし今、その常識を根底から覆すモデルが登場しました。
その名は、Gemini 2.5 Flash Image。
AIコミュニティで「圧倒的なパフォーマンス」と噂され、その正体が謎に包まれていたコードネーム「nano-banana」。その正体こそが、このGoogleの次世代AI「Gemini 2.5 Flash Image」だったのです。
本記事では、既存の画像生成AIとは一線を画す、Gemini 2.5 Flash Imageの真価を、徹底的に解説します。
Gemini 2.5 Flash Image、その”圧倒的性能”の秘密
モデル名にある「Flash」は、単なる生成速度の速さだけを意味しません。その裏には、これまでAIが苦手としてきた課題を克服する、3つの革新的な技術が隠されています。
1. キャラクターの再現性が神レベル!「キャラクター一貫性」技術
皆さんが最も求めていた機能かもしれません。Gemini 2.5 Flash Imageは、キャラクターの一貫性を驚くほど高い精度で維持します。
従来のAIは、同じプロンプトを与えても、キャラクターの顔や服装、スタイルが少しずつ変わってしまいました。しかし、この新モデルは、一度生成したキャラクターのアイデンティティを深く学習し、異なるシチュエーションやポーズで再生成しても、その特徴を完璧に再現します。
- ユースケース: 漫画の連載、ブランドキャラクターのシリーズ展開、ストーリー性のあるビジュアルコンテンツ作成など、キャラクターに命を吹き込むあらゆるクリエイティブワークフローにおいて、圧倒的な効率化をもたらします。
キャラクター一貫性を実現するプロンプト
キャラクターの一貫性を維持するためには、プロンプトの記述方法が鍵となります。特に重要なのは、以下の3つのアプローチを組み合わせることです。
1. キャラクターを詳細に定義する
まず、キャラクターを徹底的に言語化することが重要です。単に「若い女性」ではなく、身体的特徴や服装、髪型などを具体的に記述することで、Geminiがキャラクターのアイデンティティを理解しやすくなります。
例: 「日本の女子大学生、黒いショートボブ、メガネをかけている、白いTシャツとデニムパンツを着用」
2. キャラクターに固有の識別子を付与する
キャラクターに独自の識別子(名前やコードネーム)を与えることで、AIがそのキャラクターを記憶しやすくなります。この識別子をプロンプト内で繰り返し使用することで、一貫性が維持されます。
例: 「アリスという名の若い女性、黒いショートボブ、メガネをかけている、白いTシャツとデニムパンツを着用」
次のプロンプト: 「アリスが図書館で本を読んでいる様子」 「アリスがカフェで友人と話している様子」
3. 画像を参考として利用する
最も効果的なアプローチは、生成した画像を次のプロンプトにインプットとして与えることです。Gemini 2.5 Flash Imageは、入力された画像を深く理解する能力に優れているため、キャラクターの特徴を正確に捉え、新しいシーンに反映させることができます。
例:
- 最初のプロンプトでキャラクターを生成する。
- 生成された画像をアップロードし、次のプロンプトを記述する。
- プロンプト: 「この人物を、雪山でスノーボードをしている様子で」
これらの方法を組み合わせることで、Gemini 2.5 Flash Imageの持つキャラクター一貫性機能を最大限に引き出すことが可能です。
2. 複数の画像をシームレスに融合!「マルチイメージ・フュージョン」
これまで高度な画像編集ソフトでしか実現できなかった「複数枚の画像合成」が、自然言語の指示だけで可能になりました。
例えば、ある人物のポートレートと、別の場所の風景画像をインプットとして与えるだけで、その人物が違和感なく風景の中に溶け込んだ一枚の新しい画像を生成します。製品写真と特定のアーティストの画風を組み合わせることも可能です。
- ユースケース: 複雑なビジュアルコラージュ、商品写真の背景変更、バーチャルな舞台設定の作成など、これまでのワークフローを劇的に短縮します。
マルチイメージ・フュージョンのプロンプト
この機能を使う際は、以下のように複数の画像をインプットとして提供し、それらをどう融合させるかをテキストで指示します。
- インプット画像A: 別の背景に合成したい人物の画像
- インプット画像B: 人物が写っていない背景の画像
そして、プロンプトで以下のように指示します。
- 例:
- 「画像Aの人物を、画像Bの背景に自然に溶け込むように配置してください。」
- 「画像Aの製品を、画像Bの風景の中にあるように見せてください。影も自然に付けてください。」
このように、画像とテキストの両方で、AIに「何を、どこに、どのように」融合させるかを明確に伝えることで、より精度の高い結果を得ることができます。この考え方は、キャラクターの一貫性を持たせる際のプロンプトの記述方法と非常に似ています。
3. プロンプトの”意図”を汲み取る驚異の「プロンプト精度」
Gemini 2.5 Flash Imageの最大の強みは、その基盤となるGoogle Geminiモデルの高度な推論能力にあります。
「広角レンズで、逆光の中、マクロ撮影した〇〇」といった、複数の要素を含む複雑なプロンプトでも、その意図を正確に解釈します。さらに、「服のシワを消す」「人物の向きを変える」といった、画像の一部を精密に編集する指示にも高い精度で応えます。単なる生成だけでなく、編集能力においても他を圧倒しているのです。
Adobeとの協業が意味するもの
このモデルの登場と同時に、GoogleがAdobe FireflyやAdobe Expressへの搭載を発表したことは、AIクリエイティブ市場における極めて重要な出来事です。
Adobeというプロのクリエイターが信頼を置くプラットフォームに、Gemini 2.5 Flash Imageの革新的な技術が組み込まれることは、単なる提携以上の意味を持ちます。これにより、Adobeユーザーは、自社のワークフローを変えることなく、この新次元の画像生成AIの力をシームレスに利用できるようになります。
AI料金の面でも、Adobeのサブスクリプションプランを通じて、クレジットという形で利用できるため、コスト管理も容易になります。
Gemini 2.5 Flash Imageの利用方法と料金
このモデルの力を試したいと考えている方のために、主な利用方法と料金体系をまとめました。
- 開発者向け: Google AI StudioやAPIを通じて、自社サービスに組み込むことができます。料金は100万出力トークンあたり30、1画像あたり約0.039(約6円)の従量課金制です。
- クリエイター向け: Adobe Fireflyなどのサービスを通じて、既存のワークフローの中で利用できます。料金は、Adobeのサブスクリプションプランに準じます。
- 一般ユーザー向け: Google GeminiのWeb版やアプリを通じて、無料で試すことが可能です。ただし、無料版で生成された画像にはAI ウォーターマークが付加されることがあります。より高度な機能やウォーターマークなしの画像が必要な場合は、有料プランが用意されています。
利用方法 | 対象者 | 特徴 | 料金体系 |
Gemini (Web / アプリ) | 一般ユーザー | – 誰でも気軽に試せる – チャット形式で画像生成 | 無料(ウォーターマーク付加の可能性あり) Google AI Proプラン(有料) |
Adobe Firefly / Express | クリエイター デザイナー | – 慣れ親しんだ環境で利用 – 他の編集ツールと連携 | Adobeサブスクリプションに含まれるクレジット制 (プランによって異なる) |
Google AI Studio / API | 開発者 企業 | – サービスへの機能組み込み – 高度なカスタマイズが可能 | 従量課金制 – 100万出力トークンあたり$30\0.039 |
実際に画像を読み込ませて変更をお願いしてみると…
フリー画像で「笑顔の女性」をGeminiに読み込ませて着衣と髪型を変えるように指示してみました。

プロンプトとして
「画像の女性を日本髪にして和服を着せてください。和服は藤の花をデザインしたものが良いです。」
といった簡単なものです。和服の色や留め袖・振袖の区別なども指示してあげると親切でしたね。
といいつつ、変更・生成された画像が下になります。
プロンプトどおりに日本髪で藤の花をあしらった和服の女性の出来上がりです。和服の色は指定しませんでしたが「藤の花」から藤色?になったのだと思います。

ポーズも変えられるとのことなので、再度挑戦してみました。
プロンプトは
「画像の女性を日本髪にして和服を着せてください。和服は藤の花をデザインしたものが良いです。和服の色は暗めの紫で。さらに、姿勢を変えて「番傘」を肩に乗せるように持たせてください。番傘の色は紅色で傘の縁は銀色としてください。」
としました。ちょっと複雑。
生成された画像が下になります。

気軽に設定したプロンプトでここまでできるとなると、利用価値は高いですよね。元画像さえあればいかようにも(とは言いすぎかな)できるとなるとは、驚きです。
以上は簡単な例ですが、もっと高度な
- キャラクター一貫性
- マルチイメージ・フュージョン
等も利用することで、自由自在な画像生成の世界が体験できるでしょう。
読み込み画像の制限
おまけですが、Geminiに読み込ませることのできる画像の制限は、
- 最大画像サイズ: 7MB
- サポートされている画像形式: JPEG, PNG, WEBP
APIを利用する場合は、最大500MBまでの画像を扱うことも可能ですが、一般ユーザーが利用するGeminiアプリやGoogle AI Studioでは、上記の制限が適用されます。
出力される画像のサイズと型式
Gemini 2.5 Flash Imageで生成される画像のサイズは、現時点では最大1024×1024ピクセルです。
これは、多くの画像生成AIモデルにおける標準的な高解像度であり、ウェブサイトやSNS、デジタルアートなどの用途には十分な品質です。
ただ実際に画像生成してみると、元画像のアスペクト比に合わせて1248×832ピクセルだったりするので、固定ではないようです。

また、画像の出力形式はPNG・JPEG・webpがサポートされています。
通常はPNGのようですが、プロンプトでJPEG・webpを指定できます。
プロンプトの例:「形式はJPEGでお願いします。」や「形式はJPEGでお願いします。」
将来的には、より大きなサイズの画像や、さらに多様な形式での出力が可能になる可能性もあります。
既知の問題と今後の課題
Gemini 2.5 Flash Imageが高性能と言ってもすべてに満足できるのかというとそうでもないようです。
Googleも、Gemini 2.5 Flash Imageにはいくつかの改善点があるとしており、今後のモデルアップデートを通じて対処していく方針であるとしています。
現在の問題点
1. 日本語の正確なレンダリング
最大の課題の一つが、画像内に日本語の文字を正確に生成する能力です。漢字やカタカナ、ひらがなをプロンプトで指示しても、不自然な文字や誤字、文法的な間違いが発生することが報告されています。これは、日本語の学習データが英語に比べて少ないことに起因します。
2. 細部のハルシネーション(幻覚)
全体的な構図や主要な被写体は正確に描画できますが、人物の指の数や、複雑な模様の細部など、細かな部分で不自然な描写や情報の矛盾(ハルシネーション)が発生することがあります。
3. 複雑なプロンプトへの対応
「〜な雰囲気で、〇〇と△△を組み合わせ、□□のようなスタイルで」といった複数の要素が複雑に絡み合ったプロンプトに対して、意図を完全に汲み取れない場合があります。特に、否定的な指示(例:「〜ではない」)は、まだ完璧に反映されないことがあります。
今後の課題
1. 多言語対応のさらなる強化
現在は英語でのプロンプトが最も効果的ですが、日本語を含む多言語での精度をいかに向上させるかが大きな課題です。日本独自の文化や、漫画・アニメのスタイルなどを正確に理解し、表現する能力が求められます。
2. 創造性の拡大
単に現実の画像を再現するだけでなく、より抽象的で芸術的なプロンプトに対応し、AI独自の創造性を発揮できるかどうかが問われます。ユーザーの創造性を刺激し、新たな表現方法を提示できるモデルへと進化する必要があります。
3. 倫理的・法的課題への対応
AIが生成する画像の著作権や、実在の人物の画像生成に関する倫理的な問題は常に議論されています。Gemini 2.5 Flash Imageも、これらの課題に対して、ウォーターマーク技術の進化や利用規約の厳格化などで、どのように対応していくかが重要です。
これらの課題は、Gemini 2.5 Flash Imageがまだ進化の途上にあることを示しています。しかし、Googleの継続的な改善により、これらの問題点は徐々に解決されていくと期待されます。
Gemini 2.5 Flash Imageに関するよくある質問(FAQ)
- QGemini 2.5 Flash Imageとは何ですか?
- A
Googleが開発した、最新の画像生成・編集に特化したAIモデルです。従来のAIが苦手としていた、キャラクターの顔やスタイルの一貫性維持、複数の画像を合成する能力に優れており、「nano-banana」というコードネームでAIコミュニティで話題になっていました。
- Q誰でも無料で利用できますか?
- A
Geminiの無料版ユーザーであれば、GeminiのWebアプリやモバイルアプリから無料で利用できます。ただし、無料版で生成された画像には、AI生成物であることを示すウォーターマークが付加されることがあります。
- Q有料版はありますか?
- A
はい、あります。Googleの「AI Pro」プランに加入することで、ウォーターマークなしの画像生成、より高速な処理、高度な編集機能などを利用できます。また、開発者向けにはGoogle AI Studioを通じてAPIが提供されており、従量課金制で利用可能です。
- QAdobeとの協業は、私たちユーザーにどんなメリットがありますか?
- A
Adobeの「Adobe Firefly」や「Adobe Express」といったクリエイティブツールにGemini 2.5 Flash Imageが搭載されるため、普段からAdobe製品を使っているクリエイターは、慣れ親しんだ環境で最先端のAI機能をシームレスに利用できます。これにより、作業効率が飛躍的に向上します。
- Q日本語のプロンプトでも問題なく使えますか?
- A
基本的には使えますが、現時点では英語のプロンプトの方がより高い精度で意図を反映する傾向があります。これは、AIの学習データが英語圏のものが圧倒的に多いためです。しかし、Googleは日本語対応を継続的に改善しており、今後のアップデートに期待が寄せられています。
- Qなぜ「nano-banana」と呼ばれていたのですか?
- A
Gemini 2.5 Flash Imageが正式発表される前、AI性能評価サイトで「nano-banana」という匿名モデルとしてテストが行われていました。その圧倒的なパフォーマンスがコミュニティで大きな話題となり、正式名称が明かされるまで、このコードネームで呼ばれていました。
結論:AI生成の未来は、ここから始まる
Gemini 2.5 Flash Imageは、これまで画像生成AIが抱えてきた「制御性」や「一貫性」といった根本的な課題に、明確な答えを出しました。
単なる「綺麗な画像」ではなく、「意図した通りの画像」を、驚くべき速さと精度で生み出すこのモデルは、私たちのクリエイティブワークフローを劇的に変えるでしょう。
これからは、AIに何ができるかを問う時代から、AIを使って何を創造するかを考える時代へと移り変わります。ぜひ、あなたの手で、その力を体験してみてください。
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